私´と私─第22話─
I' and I - 22nd Episode -

 今日2004年1月16日金曜日午前11時4分、予定より4分遅れて眼科に着いた。待合室には座れるぎりぎりの椅子が余っていた。暖房は余り効いておらず着いて暫くはコートを脱がなかった。私の診察が始まったのはそれから15分位経ってからだった。
 先ず看護師が何時もの様に通常の眼圧検査 (「私´と私─第5話─」参照) をした後検査室の椅子に座って待つ様に言われた。診察室で私を最初に診た男性医師は若く端正な顔をしていた。言葉遣いも丁寧だった。MRI検査 (「私´と私─第2話─」参照) の説明は受けましたかと訊かれたが私ははいと答えた。実際は照射の効果が無いと言う程度の説明だったが…。診察の手順は何時もと変わりなかった。診察は5分位で終わった。又呼ぶので外の待合室で待つ様に言われた。この医師は院長ではなかった。多分次に呼ばれた時に院長が診察に当たるのだろうと思っていた。
 しかしそれ迄が長かった。私は只管足りない睡眠を補うかの様に目を瞑って俯いていた。時々目を開けて周りの状況を把握していたが私は無関心だった。私の目の前を手袋やマフラーを落として行く人が居たが何時もは声を掛けて気付かせたり拾って届けるのだがこの時は全く何もしなかった。他の人が私の代わりをしてくれたので安心した。再び私の名前が呼ばれたのは午後1時過ぎだった。
 診察室には矢張り院長が居た。老練そうな男性だった。診察は前の医師と余り変わらなかったがMRI検査の結果の詳しい説明を受けた。断層写真を見せながら院長は眼筋肉が腫れていることや上瞼に脂肪が入り込んで目が出ている様に見えることを説明してくれた。院長は質問した。
 「物が二重に見えることは無いですか?」
 「いえ、時々あります」と私は答えた。
 院長はその後で少し考え込んだ様子で「今使っているダーゼン (「私´と私─第5話─」参照) を1日3錠に増やしてデタントール (「私´と私─第18話─」参照) も1日3回にしましょう。又ステロイド系のお薬を差し上げますので差して様子を見て下さい」と言った。更に「もしこれで効き目が無ければ瞼の脂肪を取る手術をすることになりますがこれならすぐ元の目に戻りますよ。瞼が上がって白目の部分が見えて目が出ている様に見えますが目はそんなに出てないです」と付け加えた。
 私は「はい」と答えた。手術か…。内心怖かったが…。治療費の心配もある。効き目が無ければ悩みの種が増える。最後に「2、3週間後に又来て下さい。それからは何時もの様に1か月後で良いですから」と言われた。
 処方箋を受け取る時に窓口で「お薬はどうなさいますか?」と訊かれた。私は意味が解らなかった。患者の一存でどうにかなるものなのか。私は「その薬は初めてなんですけど」と言うと初めて窓口担当の女性は納得した様で「ああ、そうですか」と言い、「じゃ、リンデロン( リンデロン液(Rinderon) )は1本にしておきましょう」と付け加えた。どうやら薬の量を訊きたかったらしい。
点眼していたリンデロン液の袋 点眼していたリンデロン液

点眼していたリンデロン液の袋
完全に遮光する袋。

点眼していたリンデロン液
本剤は耳鼻にも使われることが分かる。

服用していたプロミド錠

服用していたプロミド錠
途中から処方されなくなった。服用薬で胃を荒らすことが無くなったと判断した(?)為だろうか。

 又次の予約を入れた。次は1月30日金曜日午前11時である。受付の女性に「ここですか?」と訊くと「いえ、病院へ行って下さい」と言われた。所謂「病院」が詰まり私が前回迄行っていた眼科になる。これからはそれを大学病院と区別する為に「眼科病院」、今日行って来た病院を「クリニック眼科」と呼ぶことにする。又あの眼科病院に戻れるのか。渡された予約票を見るとあのマドンナ女医が診察に当たることになっている。どうやら前回の心配は杞憂に過ぎたらしい。私は一安心した。どうも顔を見ないと忘れそうな懸念があるから。どんなに魅力的な人であれ私の貧寒なイメージの中ではその像を脹らませることが出来ずそのままでは逆に萎んでしまいそうになる。だから実感が必要なのだと悟る。
 会計は次回の眼科病院の時に払う様に言われたので今回の診療費は分からなかった。帰りに今回2度目の来店になる薬局で薬を貰った。店の人から薬を貰う時に一部私の解らない薬が混じっていた。 プロミド錠(Promid tablets) だったがこれは胃酸の分泌を抑える薬である。消化管粘膜を保護し組織の修復をする薬である。何故こんな薬を処方したのか店の人が私に訊いてきたが私にも解らなかった。ダーゼンと云う飲み薬を1日3錠に増やしたことで胃に負担が掛かる為に渡されたのだろうか。それとも私が院長の説明を聞き逃したのだろうか。或いは処方ミスだろうか。色々疑問が残ったがよしとした。これは橙黄色の錠剤で1日3回毎食後服用である。もう1つのリンデロン液はステロイド系の無色透明の点眼薬である。点鼻、点耳剤でもある。炎症やアレルギー反応を抑える薬である。これを両眼1日3回点眼する。その他にダーゼンやデタントールがあるが今回は手持ちのものが大分使用を怠っていて余っているので処方する必要は無かった。因みにダーゼンは60錠強、デタントールは4本余っている。院長にその事を告げると仰け反って絶句していた位である。因みに今回の薬代は660円だった。当分は薬漬けになりそうだ。
 薬局を出ると1時半を回っていた。日差しは明るかったが風が強く寒かった。おまけに空腹だったので寄り道もせず真っ直ぐ家に帰った。

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